ブルックスカレッジ

2017.03.09

インタビュー

サイラス流ハイブリッドな走り方 ~走れる腰の作り方とトレーニング方法~

サイラス流ハイブリッドな走り方 ~走れる腰の作り方とトレーニング方法~

1月にブルックスと契約したケニア人ランナーのサイラス・ジュイ選手にインタビューを行った全4回シリーズの第3回は「サイラス流ハイブリッドな走り方 ~走れる腰の作り方とトレーニング方法~」

生まれ育ったケニア時代よりも日本生活の方が長くなったサイラス選手。彼だからこそ肌感覚で捉えてきた両国の違いは、一読に値する内容です。
今回は、そんな日本通なサイラス選手ならではのトレーニング方法。レースから逆算する組み立て“腰”の話が飛び出します。



アスファルトは走らない!

—前回、クロカンコースやトレイルなど不整地をよく走ると言っていました。もう少し具体的なお話をして頂いてもいいですか?


ケニアでは、毎日走っても筋肉痛になることはありませんでした。でも、日本に来て走るとすぐに痛めるんです。どうしてだろう? って色々考えたら、走る環境が違っていたことに気がついたんです。土かアスファルトかというね。



—そんなに違うものですか?


はっきり違います。アスファルトは良くないです(笑)



—具体的にはどういう影響がありますか?


痛みですね。筋肉痛が必ずあるんです。若い時はその筋肉痛との戦いでしたし、ケニアではなかったので戸惑いは大きかったです。他には痛みを抱えたままトレーニングはパフォーマンスにも良くないですね。結局、痛みを引かせる時間が必要になって、量も質も落ちてしまいます。



—では、実際のトレーニングでは、どういうところを走っているんですか?


目標とするフルマラソンの大会日から逆算して、3ヶ月前、2ヶ月前、1ヶ月前と3つのフェーズ分けをするところから始まります。


<3ヶ月前>ベース期
トレイルやクロカンコースなどを使い、負荷の高いトレーニングをしてしっかり走りこんでスタミナを作る。

<2ヶ月前>スピード練習期
河川敷やロードなど平坦な場所を使ってスピード練習を組み込む。

<1ヶ月前>回復期
追い込むトレーニング期からレースに向けて調整に入る期間。1回アスファルトを走ったらその後3日間は芝生の上を走るよう心掛ける。


マラソンは腰で走る! 本番以外42.195kmを走らないワケは?

—トップランナーは特に、怪我を恐れてトレイルでのトレーニングを控える人もいますが、スタミナ作りの時にトレイルとか不安定なところを走るのはなぜですか?


腰を作る為です。



—腰を作る…?


はい。日本人にはなかなか理解してもらえないかもですが、マラソンは腰で走るんです。別の言い方をすると、背筋やお尻の筋肉を使って走るんですね。でも、平坦なところを走っていても背筋やお尻の筋肉は鍛えられないんで、トレイルなど体幹を使って走る環境が一番なんです。



—一種の筋トレのような効果があるんですね?


そうです。日本人ランナーは「腰が割れる」傾向にあります。でもケニア人は腰が揺れずにまっすぐです。つまり、日本人は筋力が不足しているんです。僕は、ベース期に週に2日くらいはトレイルを走っていますので、”腰を作る”トレーニングを取り入れるといいと思います。



—スピード練習期ではどんなトレーニングメニュなんですか?


例えば、朝と夜と1日2回走るとします。その場合、スタミナ用とスピード用と分けることが大切です。例えば
朝:20km(スピード用)
夜:20km(スタミナ用)
とか
朝:30km(スタミナ用)
夜:12km(スピード用)
とか。



—フルマラソンの距離を分けて走るんですね?


はい。フルマラソンをMAXスピードで走った場合、体へのダメージが非常に大きいんです。すると回復させるのにとても時間が必要で、本番以外42.195kmは走りません。



—その練習方法を市民ランナーに当てはめるとどうなりますか?


最初は5kmでもいいと思います。ゆっくり目に時間を掛けて走るスタミナ用と心拍もあげて追い込むスピード用とか。年齢や実力に応じてその距離を7km、10kmと増やしていけばいいと思います。



あとがき

ケニアで15年過ごし、日本で16年目を迎えたサイラス選手は、両国の違いを知るからこそ、柔軟な考え方と数多くの失敗から生み出されたメソッドを持った人でした。トレイルなど不整地を使ったトレーニング方法を早くから取り入れるなど、その姿勢は、彼の人生そのもののようにハイブリッドと言えます。

〜次回、最終回予告
サイラス流ハイブリッドな走り方 ~ケガをせずに走り続ける方法とシューズの選び方~

ケガをせずに走り続ける方法やシューズの選び方、そしてセカンドキャリアの夢を語ってもらいました。


(インタビュアー:山田 洋)



山田 洋

スポーツジャーナリスト

アスリートだけでなく経営者など幅広いインタビューを数多くこなす。また、ロードからトレイル、ウルトラも走る市民ランナーでもある。

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