ブルックスカレッジ

2017.08.10

怪我

足に違和感がある人は必見!ランニング障害を引き起こす原因

足に違和感がある人は必見!ランニング障害を引き起こす原因

 ランニング障害を長年診てきた整形外科医であり、現役サブ2.5ランナーでもある諏訪通久先生に、「ランニングと怪我」についてお聞きしたシリーズの第二回目になります。 今回はランニング障害の原因について詳しく話を聞いてみました。
走っていると足に多少の違和感を覚えることがありますが、そのうち治るだろうと放置することが多いと思います。もしかすると深刻な怪我の前兆かもしれないので、自分の状態を確認する意味でも知識として覚えておくと役立つのではないでしょうか。

諏訪通久先生のプロフィール

群馬県高崎市にある「榛名荘病院」に勤める整形外科医。専門は膝関節でスポーツ障害全般(特にランニング障害)の治療が得意。 自身もランナーとして活動し、ランニングを始めて一年でサブスリーを達成。自己ベストは第66回別府大分毎日マラソンでの2時間28分57秒。
外来、病棟、手術、日直、当直など通常の業務をこなしながら時間を作ってトレーニングをしている。1981年生まれ、群馬県前橋市出身



— 1つや2つくらい怪我を抱えていることが勲章かのような風潮もあって、ランナーにとって怪我はとても身近な存在ですよね?


前回お話したように、私も怪我持ちランナーでした(笑)。捻挫や打撲、骨折といった外傷としてすぐ分かる怪我と違い、「ランニング障害」ははっきりとした自覚症状が見えにくい怪我なんです。



— 違和感はあるけどガマンできてしまうということですか…


はい。なんとなくある痛みや違和感を持ちながら走っているランナーは多いと思います。でも、なんとか走れてしまうので、つい放ったらかしにしてしまう。そこが「ランニング障害」の厄介なところです。




— 一口にランナーと言っても、ファンラン中心の人からシリアスランナーと呼ばれる人まで幅がありますけど、どういう人に怪我が多いんですか?


ランナーを速さで表すと2時間前半で走るランナーを頂点にピラミッド型になります。数というボリュームでは、圧倒的に市民ランナーが多いので、怪我の数も比例して多くなります。ただ、サブ3ランナーの怪我率は高いですね。やはり、高負荷を課しているとそれだけ怪我もしやすくなるのだと思います。


ランニングドクター諏訪通久さん1


腸脛靱帯炎(ランナー膝)の原因

— 多くのランナーにとって身近な「ランニング障害」ですが、その見えにくい初期症状・原因をどうやって見つけたらいいのでしょうか?


これは、靭帯と膝の外側の骨がこすれて摩擦が生じ、炎症を起こす障害ですが、膝の曲げ伸ばしや地面を蹴ったときにきしむような痛み(違和感)を覚えたら要注意です。



— どういう時に起こりやすいんですか?


よくあるのは下り坂です。下り坂はストライドが大きくなって体重がかかるためこの部分に負荷がかかりやすくなります。また、O脚の方や足首が内反している(内側に捻っている状態で、足の外側で接地する)方は、地面を踏みこむ時に足の外側に体重が乗るので、腸脛靭帯に衝撃・緊張が加わりやすくなります。



— 外側が過度に削れた状態のシューズも腸脛靭帯炎を引き起こす原因となりますか?


十分考えられます。外側が削れたシューズを履くと、自然と足首が内反状態になって怪我を誘発するので、シューズ寿命として買い替えのタイミングを考えた方が良いと思いますよ。



シンスプリントの原因

同じ動作の反復運動でもあるランニングやジャンプを繰り返すバレーボールのように「スネの内側」が痛くなるのがシンスプリントですが、放っておくと完治までに長期間を要する面倒な障害です。



— どういう要因が考えられますか?


いくつか考えられます。まずは、反復動作が長時間続くこと。そして、固い地面や平坦でない場所を走ることも要因といわれています。ランニングの特徴そのままですね。



— これでは、ランニングをするな!と言われている気になってしまいます…


ランナーに走るな!とは、同じランナーとしてなかなか言いにくいですけど(笑)、他に考えられる要因として、基礎的な体力が不足している場合もシンスプリントになりやすいとされています。



— 身の丈に合っていない過度な練習をしているということですか?


そうです。運動強度に対して、筋力のバランス・筋持久力・柔軟性などが足りていないまま反復動作を長く続けることは怪我の元なんですよ。でもね、初心者だけの障害かと言うとそうでもなくて、なんらかの理由で中長期に渡って走らなかった人が、久しぶりに走り始めるような時も、シンスプリントになる可能性があるんです。つまり、筋力が以前より低下しているのに、以前と同じ高強度の運動をすぐにしようとする時も注意が必要です。



疲労骨折の原因

この障害の主原因は「オーバーユース=使い過ぎ」です。



— そうですよね。でも、疲労骨折するまで気がつかないものなのでしょうか?


「ランニング障害」の厄介なところは自覚症状が見えにくいと冒頭に言いましたが、言い換えると、ガマンできてしまうところです。



— なんとか走れてしまうから、つい放ったらかしにしてしまうという…


それです。少々の痛みはランナーなら持っているものみたいな風潮にも押されて無理をしてしまい、結果的にオーバーユースになるわけです。これは疲労骨折だけに言えることではなく、「ランニング障害」全般に当てはまる要因として知っておいて欲しいですね。



アキレス腱炎の原因

第1回の記事でもお伝えしましたが、ランナーの中でも“蹴るタイプ”のランナーに多いのがアキレス腱炎で、階段の上りや上り坂で “蹴る”動作、もしくはそれに近い動きをする時に起こりやすい症状です。



— 走り方に原因があるんですね?


そう言えます。それから中高生含めてトラック練習をする時も注意を払って欲しいです。



— トラック練習? どうしてですか?


正確に言うと、トラックをスパイクを履いて走るときですね。トラック練習はスピード練習やポイント練習といった比較的短い距離を高強度で行う練習が多く、スパイクを履くことで足への負担がさらに増すわけです。



— LSDとか疲労抜きジョグとかよりも、高負荷なメニューをこなす時にアキレス腱炎を引き起こしやすくなるんですね。


はい、その通りですね。あとひとつありまして、これも第1回でお伝えしたと思うんですが、短距離から長距離に移行したランナーも要注意です。“蹴る”クセが抜けきれずにいると、アキレス腱炎を招くので。



足底筋膜炎の原因

この症状は「着地障害」と言い換えてもいいくらい、特にランナーにとっては身近な「ランニング障害」です。

— 着地障害?


ランニングは徒歩の3倍の負荷が掛かるとよく耳にしますでしょ? 普段から走っているランナーは一般の人よりも何倍も着地衝撃を受けて過ごしているわけです。



— 確か、フルマラソンでは万単位の歩数だそうですから、何度もなんども同じ衝撃を継続的に受け続けているのがランナーなのだと…


しかも、アスファルトの上とか硬い路面の上ですからね。詳しくは次回以降にお伝えしたいと思いますが、適切なフォームや適切なギア選びも怪我の防止には大事な要素になってきます。



怪我を避けたいのなら『栄養・休養・練習』です!

ランニングドクター諏訪通久さん2

— ここまで聞いていると、どの障害も引き起こす要因として似た理由がある気がしてきました。それは“やり過ぎ”じゃないかな、と。


いわゆるオーバートレーニングですね。オーバートレーニングはトレーニング頻度と負荷が高く、休養(回復)が追いつかない状態なわけですけど、これは市民ランナーに限らず、学生も実業団選手も陥りやすい症候群と言えるかもしれませんね。



— どうしてランナーは“やり過ぎ”てしまうのでしょうか?


いくつか考えられます。練習負荷に対する監督やコーチの知識不足、休養不足、栄養不足といった状況への対応ミスがあります。



— 逆の言い方をすると、適切に対処すれば防げますよね?


そうです。予防は十分に可能だと思います。ただ、別の観点から見るとなかなか難しい一面もあるんです。



— “別の観点”とは?


例えば、練習を休むことへの焦りとか、失敗してしまったレース後の後悔から生まれる取り戻し練習で追い込みすぎてしまうとか、ランナー自身の心理面も大きな要因になるんです。



— 頭ではわかっているけど、どうしても走りすぎてしまう…


怪我をしないためにどうしたらいいですか? とよく聞かれるんですけど、いつも答える言葉があります。怪我を避けたいのなら『栄養・休養・練習』です、と。私もランナーですから、周りが走っていると焦りや不安が生まれる気持ちはとてもよく分かるんですが、回復しないまま運動を続けると怪我を誘発してしまい、痛みを我慢しながらなんとか走り続けているうちに、気がついた時には長期的な治療が必要な深刻な状態になってしまっているんです。



— 日々の調子の良し悪しが原因になることはありますか?


それぞれに注意点があります。まず、調子が悪い時ですが、走りが乗れない日って誰にでもあると思うんです。そういう時は、精神的な面も含めて何らかの疲労がある場合が多いんですけど、その中で無理してメニューをこなそうとしている場合は注意が必要です。それは例えば、30km走するぞ!と決めていたので、身体がついていかないのに無理に頑張っちゃうようなケースですね。 一方、調子が良い時も注意が必要です。



— 調子が良い時も? なぜですか?


走り過ぎちゃうんです。調子が悪い時は無理をしない我慢を、調子が良い時はやり過ぎない我慢を心がけて欲しいです。



まとめ

 出来れば怪我はしたくないものと誰しもが思うことではあるのですが、ランネットに掲載されている、一万人以上のランナーを対象にアンケートを取った「ランナー世論調査2016」では、65%以上のランナーがランニングによって何かしらの痛みを抱えているそうです。

 諏訪先生によると「ランニング障害」の特徴は、自覚症状が見えにくく、最初はガマンできてしまう点が厄介だと言います。そして、治るまでに長期的な治療が必要になってくる点も見逃せないポイントです。

 基礎知識を身につけ、『栄養・休養・練習』を常に意識し、“やり過ぎない”こと。違和感や痛みは身体からのサインだと受け止め、早めに対処したいものです。


(インタビュアー:山田 洋)

 以下の記事も参考にどうぞ。

  • こんな痛みの時は要注意!整形外科医が語る代表的なランニング障害5選
  • 故障に悩むランナー必読!ケガの原因になるオーバートレーニング


取材協力:榛名荘病院

群馬県榛名山の南麓にある豊かな自然に囲まれた地域包括医療を担う病院。一般外傷から脊椎手術、膝・肩関節鏡手術など地域の患者様の様々なニーズに対応しています。また充実したリハビリテーションを提供し、患者様の社会復帰を支援します。

住所:群馬県高崎市中室田町5989
TEL:027-374-1135

榛名荘病院

山田 洋

スポーツジャーナリスト

アスリートだけでなく経営者など幅広いインタビューを数多くこなす。また、ロードからトレイル、ウルトラも走る市民ランナーでもある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事一覧