ソールから考える、走ること

BROOKS STANDARD vol.2 前編

人々にとっての選択肢や価値観は、時代の流れによってさまざまな広がりを見せる。ランニングシューズのスタンダードを創ったBROOKS(ブルックス)が探る、“現代のスタンダード”とは。
本企画では「ソール」と「シューズチェンジ」に着目し、さまざまなバックグラウンドを持つランナーに意見を聞く。

1914年にペンシルバニア州で創業したBROOKSは、100年以上の歴史を持つランニングギア専門ブランド。年齢や性別、レベルや目的を問わず、走ることを通じたすべての喜びを大切にする“Run Happy!”をコンセプトにシューズを届け、アメリカのランニング専門店市場ではシェアNo.1を誇る。

1975年、軽量で衝撃吸収性能に優れたクッション素材である「EVA」を初めてソールに採用したのもBROOKS。その後他メーカーでも広く使用されるようになったEVAは、今やランニングシューズ界におけるスタンダードだ。 2010年には独自のクッション材「BROOKS DNA」が誕生。衝撃の強さによって反発力を変化させる素材を開発したことで、体型やスピードの違いにも柔軟に対応し、最適なクッション性を発揮できるようになっている。このように、BROOKSの歴史はソールの進化とともに歩んできた。

そして近年のランニングシーンでは、ソールに対する価値観が多様化してきている。たとえばこれまでは、クッション性に優れた厚底のシューズが“初心者向け”、反発性に特化した薄底のシューズが“上級者向け”というイメージがランナーたちにとってのスタンダードだった。しかし最近では、本来相反すると考えられていたクッション性と反発性を両立させるソールが増え、シューズの選択肢がさらに広がっている。では、実際のところソールに対してランナーはどのように考えればいいのだろうか。

こうした流れのなかで、BROOKSが新たに生み出したのは、「DNA LOFT」と「DNA AMP」という2種類のミッドソール素材。さまざまなバックグラウンドをもつランナーたちは、この新しいソールに対しどのような印象を抱いたのだろうか。

今回は、シューズアドバイザーとしてランニングシューズを知り尽くす藤原岳久、フイナム ランニング クラブ♡の一員として仲間たちと走ることを楽しむ編集者の山本博史、そしてフルマラソン24回、ウルトラマラソン2回の完走歴を持ち、JRTA認定トレーナーとしても活躍するタレントの中村優の3人に、意見を聞いてみた。

気持ちよく走ることの可能性を広げてくれる

─ ─ それぞれのスタイルでランニングを続けてきたみなさんですが、これまではどんなソールのランニングシューズを、どんな観点で選ぶことが多かったのでしょうか?

中村:私は6:30/kmくらいのペースでのんびりゆっくり走ることが多いから、普段は厚めのソールでクッションがしっかりしているものを履くことが多いですね。これまでウルトラマラソンも2回完走しているんですけど、そのときもクッション性重視でシューズを選びました。後半も頑張って走れたのは、厚めのソールに足を守ってもらえていたからかな、とも感じています。だから、薄いソールのシューズはあまり履くことがないんです。

中村優
数々のフル/ウルトラマラソンを完走

ミスマガジン2005でデビューし、『王様のブランチ』(TBS)や『saku saku』(tvk)などに出演。2008年、ホノルルマラソンで初フルマラソンに挑戦し、4時間49分54秒で完走した。『ラン×スマ 〜街の風になれ〜』(NHK BS-1)ではスマイルランナーとして数々の大会に出場。フルマラソン出場回数24回、60kmレース2回、82kmレース1回、100kmレース2回をすべて完走している。現在のフルマラソン自己ベストは4時間10分27秒。

山本:僕にとってはシューズの特徴や機能を味わいながら走ることもランニングの楽しみのひとつ。だから、レベルや速さを基準にソールを選ぶというよりは、履き心地を楽しめるものを選ぶっていう感覚が近い気がします。そのなかでも、ソールの反発を味わいながら走るのは好きですね。基本的には気持ちよくスピードに乗って走りたいタイプなので、ぽんぽんと適度に反発を感じられるシューズを履きたい。

山本博史
ランニングコミュニティにて、様々なランを楽しんでいる

ファッション、カルチャー、ライフスタイルWebマガジン『Houyhnhnm(フイナム)』の副編集長で、フイナム ランニング クラブ♡副部長。ランニング歴約5年、トレイルラン歴約3年。2018年4月には100マイル(約168km)を走るトレイルランニングレース「UTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ」にも挑戦し、45時間7分18秒で完走した。

藤原:僕自身、普段はほとんどクッションのあるもので走っています。なぜかっていうと、気持ちよく走るためにはシューズの力を借りてフォームや体を再コンディショニングする必要があると考えているからなんです。シューズを選ぶときって、結構難しく考えちゃうひとが多いんですよね。販売側のほうで「サブ4用」とか「初心者用」とか明記されている場合は、それに惑わされてしまったり。とくにクッションがしっかりしている厚底のシューズは「初心者用」として扱われがちです。でも、自分が気持ちいいと思うものを履けばいいと思います。

藤原岳久
シューズアドバイザー。フルマラソンベストタイム2時間34分

藤原商会代表、日本フットウエア技術協会理事、JAFTスポーツシューフィッター。東海大学出身。メーカーや販売店での勤務を経て、ランニングシューズフィッティングアドバイザーとして独立。シューフィッターの育成やお買い物ツアーの開催など、ランニングシューズの大切さを広める活動を行っている。フルマラソンの自己ベストは2時間34分28秒。

─ ─ 今回は、みなさんに2種類のソールを試してもらいました。「DNA LOFT」は“BROOKS史上最高に軽く、柔らかく、へたらない”ハイクッションソール。EVAとラバーとエアーを独自の配合でブレンドし、つぶれにくい気泡をふんだんに含ませることでクッション性と耐久性の高さを実現しています。

─ ─ 「DNA AMP」は“BROOKS史上最高の高反発”を発揮するソール。ミッドソールの側面と底面をシルバーの熱可塑性ポリウレタンで覆うことにより、エネルギーをロスなく推進力へと変換します。これにより、弾むような走り心地を体感できるようになりました。

中村:今回、LOFTシリーズはGLYCERIN 16(グリセリン 16)、AMPシリーズはLEVITATE 2(レビテイト2)を履いてみました。やっぱり私は安心して走りたいので、LOFTのソールが心地よかったです。すごく感覚的な感想ですけど、クッション性がしっかりありつつも、沈み込み過ぎない。それでいて硬すぎなくて、ほどよいんです。足を着いたときにやわらかすぎて沈みこんでしまうこともなく、安定感があっていいなと思いました。

藤原:クッション性を高めようとするとグラグラしてしまったり、安定性を高めようとすると硬さが目立ってしまうことが多いなか、LOFTソールではこの2つを両立させているんですよね。

中村:これくらい安心感があると、ウルトラもいけそうな気がします。

山本:僕はLOFTシリーズはGHOST 11(ゴースト11)、AMPシリーズは優ちゃんと同じくLEVITATE 2を履きました。一歩ずつ前にぽんと押し出してくれるような感覚が気持ちよかったので、僕はどちらかというとAMPが好み。レースのときも反発力が助けてくれそうです。

藤原:LEVITATE 2は前足部のほうで蹴りやすい形になっているから、よりスムーズにスピードに乗れる感覚が山本さんに合っていたのかもしれませんね。ちなみに、山本さんはフルマラソンどれくらいで走るんですか?

山本:3時間26分です。AMPくらい反発があれば、きっと後半も楽に走れそうだなって。僕の場合は、クッション性がしっかりしていると、体がラクしているような気分になっちゃうから……。

中村:私は逆にラクしたいタイプ(笑)。だからクッションがほしいんです。でも、山本さんの話を聞いて、反発のあるソールでペースアップして走ってみたいなっていう気持ちも出てきました。

藤原:お二人とも感性が鋭いな〜。そうやって、ソールを切り口に走り方を考えるのも面白いですよね。僕の場合は、ただただ気持ちよく走る動物になりたくて。それを助けてくれるのがランニングシューズなんです。体を支えてほしいときも、前に進む力がほしいときも、シューズの機能が自分の可能性を高めてくれると思っています。